碁に夢とロマンを 東京大学名誉教授 箕輪光博

 私が碁に出会ったのは、大学一年の秋でした。それ以来碁を通じて、多くの同輩、先輩、後輩と交流を深めて来ました。
 アイ・システムとの出会いも大きな出来事の1つです。惜しむらくはもう10年早く碁に出会っていれば、もっと素晴らしいことが沢山あったのではないかと思います。
 さて、碁には沢山の効用がありますが、その第一は、考える力(思考力)と対話する力(コミニュケーション力)、集中力及び注意力が身につくことでしょう。この三つは人が生きてゆくうえで、最も大切な力です。
 打ち進めるに連れて、盤上に白黒相互の石が並んで来ますが、その中で、大切な石はどれか、どの方向に次ぎの一手を向けるのが肝腎か、様々な角度から検討して、総合判断を下すことを迫られます。その時に、相手が何を考えているのかを良く理解する必要があります。人は人生においてこれと同じ場面に何度も出会います。「大切なものは何か」それを「広い心」「バランスの心」をもって探し当てる、この作業は大変難しいのですが、毎日心がけていれば、いつかはできる様になるはずです。
 第ニは、冒頭でも少し触れましたが、老若男女を問わず、沢山の人と碁を通じて友達になれることです。この「出会い」は人生に様々な楽しみを与えてくれます。家族、サークル、活動、旅行、文通、大会参加、・・・等、その気になれば活動の輪をより大きく広げ、豊かにすることが可能です。碁の素晴らしさは、そこに「多様な打ち方、考え方」があり、それらを皆で共有し、色々なレベルで楽しむことが出来る点にあります。
 第三の特徴は、歴史を大切にする大きな広い心を養うことができる点です。碁には約4000年の歴史があると言われています。昔の人達の碁を学ぶ事を通じて、私達は「時代」と「歴史」を共有し、現代を越えて未来にも思考や想いをめぐらすことができるようになります。これは何と素晴らしいことではないでしょうか。最後に一言、私の専門は森林学です。森林には木材やキノコを生産する働きだけでなく、土砂の流出を防止し、水を貯える力、CO2を吸収して、地球の温暖化を抑える働きなどがあります。つまり「見えるもの」と「見えないもの」の二つの側面があります。同様に、碁にも、見えるもの(地や石を取る)と見えないもの(全体的な石の働き)の二つの側面があり、このバランスの上に局面は進行します。例えば、白を動物、黒を植物とすれば、森林は動物と植物の織り成すハーモニーの世界であり、そこには、戦いと共存共生の関係が「生態系」として存在しています。碁でも同様で、白と黒は、お互いに戦いながら、相手を尊重し、共存、共生を楽しんでいます。人生も然りです。異なるのは、人生は一回限りですが、碁は何度もくり返しが可能であるということです。何度も夢とロマンを盤上で試みることのできるゲーム、碁は21世紀における最大の「智恵ゲーム」と言えると思います。
 子供達にこの様な精神を学んで欲しいと言うことで、こたびの日本青少年囲碁協会を発足致しました。皆さん:LetsGO