なぜ子供達に碁を教えるのか(2) 株式会社アイ・システム 代表取締役 蒲原久博

 知能の優劣を表す言葉にIQというのがあります。知能指数というこの言葉は、人間の優劣の認定書を貼り付けるかのような響きがありもし子供の頃、一度のテストでたまたま悪かったとしても、一生、劣等感に悩まされそうな衝撃を与えかねない指標になっています。このIQに対して約十年位前からEQという言葉が大きな注目をされる様になりました。EMOTIONAL-INTELIGENCE、日本語に訳せば、「心の知能指数」というのだそうです。言葉を覚え文章を理解する,計算が上手に出来る能力、この様に学校のテストで計れる能力はおおむねIQに比例しています。しかしテストでは判断できない能力が人間には沢山あります。友達と上手く付き合うことが出来るか、テストの成績が悪くても、すぐ気を取り直して、普通通りに出来るか、失敗した時、人のせいにしないで何が悪かったか、自覚して又やり直しができるか。難しい問題や困難に出くわした時、逃避しないで、解決する為の行動を起す事ができるか、という様な能力はテストでは、分からない能力です。この様な能力をEQと言うのだそうです。そして最近では、まさにこのEQこそがIQを上回る重要な人間の能力であると言われ始めました。
 最近発見した本で「EQ・心の知能指数」と言うのがあります。アメリカのジャーナリストでダニエル・ゴールマンの著書です。この人はハーバード大学大学院にて心理学の博士号を取った人です。この本の中で、色々な学者の意見や研究成果を掲載して、EQの重要性に触れていますが、その中にハーバード大学教育学部の心理学者ハワード・ガードナーの言葉を次のように引用しています。
「そろそろ才能と言うものをもっと広範囲に捉える時期に来ていると思います。子供の発達の為に教育がなしうる唯一最大の貢献は、その子が自分の才能に最もふさわしい方面に進んで能力を発揮し満足して生きられる様に応援してあげることです。私達は現在、そのことが見えなくなっています。今の学校教育は、生徒全員を大学教授に仕立てようとするかの様な内容です。そしてその様な狭い基準に合うかどうかだけで全ての学生を評価しています。学校はいい加減に子供をランクづけするのをやめて、子供達がそれぞれに持って生まれた才能や資質を見つけ、それを伸ばしてやることに力を注ぐべきです。成功に到る道は何百何千とあるのだし、その為に役立つ能力だって実に多種多様なのですから。」これまでの知性の捉え方には限界があるということです。更に著者は続けて「ガードナーが提唱する知性のキーワードは「多重性」だ。ガードナーの多重知性モデルはIQを唯一不変の知的係数として来た従来のコンセプトを大きく押し広げる。」小学校、中学校、高校、大学と学生を苦しめ続ける種々のテストもガードナーに言わせれば、「人生で本当に貴重な才覚や能力からずれた狭い範囲の知能をとうものでしかない。」と言う事だそうです。
 私は学者ではないので、この様な難しい問題を私の言葉で断言する事は出来ませんが、偉い人たちの言葉のなかには時々この様に心から共鳴できる言葉に出会います。アメリカの偉い学者が言っていると言えば、何故か昔から日本人には説得力がありますね。明治維新以来常にアメリカ、ヨーロッパから学んで来たことの名残でしょうか。しかし私はこの本を読んでいて、全くの新発見をしたということで感動している訳ではないのです。何となく言葉では上手に表現出来ないまま気持ちの中にくすぶっていたものがこの本を読んで「そうなんだ」とハッキリと認識できた訳です。私が以前からその様なEQに当るような知性が存在しIQ以上に重要ではないかと感じとっていた訳は、二宮尊徳の本に「二宮翁夜話」と言うのがあり本を読んでからです。以前この本を読んで感じ取っていた心の有り様の重要性が正にこのEQの問題である訳です。尊徳は貧困の中から独学で学び数々の村や町又藩の建て直しに貢献を納め、再建の神様と言われた人です。尊徳は農業を通して天地自然の真理をほとんど独学で感じ取った人です。尊徳はEQとは言っていません。天道、人道と言う言葉で言っています。人として生きて行くうえでの心の持ち様を人間関係や商売のやり方、又貧困に陥った村や町をどの様に再建するかという観点から語っています。正にハーバー大学の偉い先生が約十年前に言い出した事を、私達の二宮尊徳は実に百五十年以上も前に認識し更に自ら実践している訳です。すごいことです。初めから二宮尊徳の教えを見直そうと言えば、「何を今更古い事を」と仰る方が結構います。でも、アメリカのハーバード大学の偉い先生が言っていることと同じですよと言えば、日本人だったら、もう一度二宮尊徳先生の教えを勉強し直すしかないでしょう。
 どうですか皆さん。