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  未来少年ムサシ13  時は流れて


 「淋しいなあー今日で終わりかよ、IQとサッチャーはいいなあ、二人で同じ青雲か、オレ一人公立だから。卒業しても時々会おうなあ」
 ガンタツは柄にも無く悲しそうな顔をしていた。
 「勿論さ、ムサシーズのメンバー6人で、この部屋で時々会おう」
 IQが言った。
 「それにしても遅いわねームサシ君、どうしたの」
 3学期、囲碁クラブ最後の日が来て、今日は皆で送別囲碁大会を開こうという日だった。
 「時間に遅れるなんてこと、今までに一度も無かったわよ」
 「何かあったのかなあー」
 50人を越す部員が騒然となって来た。

 「校長先生はどうしたんだ」
 「校長先生まで来ないじゃないか」
 「ムサシ君に何かあったんだよ」
 「何かあったら、知らせがくるはずよ」
 益々部室は異様な雰囲気になって来た。

 皆は、窓側により校庭の向こうに見える千年桜の方を見ていた。
 「みんな落ち着くんだ。僕が校長室へ行ってくる。サッチャー一緒に行こう」
 IQが言った。
 「ガンちゃん、あとお願いね」
 IQとサッチャーは息を切らして校長室に飛び込んだ。
 「校長先生、ムサシ君はどうしたんですか」
 IQは大声で尋ねた。
 校長先生は窓の外をじっと見つめたまま動かなかった。
 校長先生の部屋からは千年桜がはっきりと見えていた。

 「校長先生、何があったんですか」
 IQは更に大声で叫んだ。
 校長先生はゆっくりと振り向き、黙って首を左右に振るだけだった。その目には止めどなく涙があふれていた。
 二人はすべてを悟った。
 「どうして、どうして・・・・・・」
 「ムサシー、ムサシー、ムサシーーー」
 囲碁部の窓からみんなの叫び声が千年桜の方へ流れて行った。


 あれから又日が昇り、陽が沈み、桜岡小学校に2万千九百と十五回の朝が来た。
 いつもの様に校舎に陽が当り、いつもの様に小鳥がさえずり、いつもの様に風が吹き花が揺れていた。
 あの時と違うのは、子供達は変わり、廊下も教室も古くなり、長い長い時の流れを感じさせた。
 「いやー懐かしいなあー、モアだろう、変らねえじゃねか」
 「おーっガンタツ、元気そうだな、何年ぶりだ」
 そこへ一人の女性が息を切らして走ってきた。
 「みんなしばらくー、元気―」
 「天然かー、相変わらずパワーいっぱいだなー」
 「元気だけが取り得よ、ガンちゃんとモアね、他は?」
 「うん、もう来るだろう」

 「皆さん、お久しぶりーわかるー」
 「・・・サッチャー、わかんねえ訳ねえだろう」
 「サッチャー久し振り、私―、」
 「天然? 若いわねー、元気そうね」
 「あなたも・・・」
 「もうダメよ、私にあなたの元気分けて頂戴」
 「ガンちゃんとモアね」
 「うん、あと一人だ」
 「あいつはいつも時間ぴったりに来るからな、あと3分ある」
 「どんなになっているんだろうね、あの天才児。意外と普通のおじいちゃんだったりして」

 そう話しているところへ悠然と紳士然とした男が近づいて来た。
 「皆さん、お待たせいたしました。大変ご無沙汰しています。お久し振りです」
 「オーIQ、ぴったりだ」
 ガンタツが言った。
 「えー何が?」4人は大笑いになった。
 「時間ぴったりに来るのは全然変わらないわね」
 サッチャーが言った。
 「アハハハーー」IQも一緒に一同大笑いになった。

 「まず、囲碁クラブへ行こう。我らムサシーズの発祥の場所だからな」
 ガンタツがみんなをうながした。
 「行こう、行こう」
 「同じ部屋かなあー」
 「そのままだといいなあー」
 「ま、行ってみりゃ分かるよ」
 5人は校門の前で出会い、校舎の中へ入って行った。

 「たしかここだったな」
 「うん、間違いないこの部屋だ」
 5人は囲碁クラブのあった部屋のドアの前に立った。
 「何だか、オレドキドキする、IQ開けろよ、お前が一番強かったからな」
 ガンタツが言った。
 「何言ってんだ、やっぱりみんなをまとめたサッチャーだよ」
 「違うわよ、そんな名誉ある役目は、あの時、一番にムサシ君を支持した天然よ」
 「そんなことない、ムサシ君の教えに一番忠実に一生懸命頑張ったのはガンちゃんよ」
 「よし、こうなりゃじゃんけんだ」
 IQのリードでドアの前でじゃんけんが始まった。
 「ジャンケンポン、アイコでショ」「ジャンケンポン、アイコでショ」
 「やったー」天然が勝ち残った。
 「さすが元プロのスタープレーヤー、やっぱ勝負には強い」
 IQが言った。

 「テヘヘヘー、では皆様、我らムサシーズの聖地、その扉を開く名誉ある役目をおおせつかりました。ここにつつしんで、ジャジャジャジャーン―ハイー」
 三原はドアの取っ手に力を込めてゆっくりと押し開いた。
 三原を先頭に一人ずつ静かに入って行った。
 「オー」思わず感嘆の声が上がった。


                                つづく