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  未来少年ムサシE  ムサシの使命


 ムサシは、これからどんな取調べを受けるのかと思うと、落ち着きが無く、部屋中をキョロキョロ見廻しながら、ぐっと唾を飲み込んだ。
 「まあ、とにかく一局打ちましょう。僕の名前は?」
 「ムサシです」
 「そうそう、ムサシ君はこの前の駅前サロンの大会で優勝したんだね。一局おじさんと打とう」
 そう言いながら、テーブルの下から碁盤と碁石を出した。

 少し緊張気味だった譲は、ほっとした表情で校長先生とじっと見つめ合った。
 「署長さんも大の碁キチなんですよ。打ち始めると帰るのも忘れて泊りがけで打つこともあるんですよ。おかげで若い者は帰るに帰れなくて朝まで付き合わされることがあるそうですよ」
 校長は笑いながら譲に説明した。
 「この前の大会は私も出たかったんだけど、あいにく社長との会合があったもんで」
 そう言いながら、ムサシとの碁はポンポン進んで行った。

 「うーん、なかなかしっかりしているね。小さいのにムサシ君は大人顔負けのしっかりした打ち方をしている。特別に勉強したいい碁だ」
 超早打ちの署長との対局は、あっという間に終った。
 「いやー参った。とても敵わない」
 いつもは堂々とした署長の顔も、碁に負けた時は恥しそうな照れ笑いを浮かべて、人なつっこい顔になるのだった。

 「9月の初旬、異常な電磁波をキャッチしたんですよ」
 署長は碁盤をテーブルの下に片付け終わると突然切り出した。
 「これほど強烈な電磁波は現代のどんな物でも、例えば、戦車やジェット戦闘機でも出さないですよ。それが、千年桜の所で出たんですから驚きです。考えられる事は二つしかありません。一つはUFO、もう1つは・・・・・・」
 そう言うと署長は、ムサシと譲の顔を交互にじっと、目玉だけを動かし、見つめながら言った。
 「タイムマシン」

 ムサシはぐっと唾を飲み込んだ。
 「父ちゃん」ムサシは父の手をギュッと握った。
 「信じていただけますでしょうか」
 譲は署長の目を見ながら恐る恐る言うと、助けを求めるように校長を見た。
 「署長・・・」
 「そう信じるしかない証拠があるんです」
 それまで黙って座っていた校長先生は身を乗り出した。
 「とにかくこのメモを見て下さい」
 そう言って数日前に譲が手渡したメモを署長に見せた。

 『私達二人は今朝早く、60年後の未来から千年桜の元に着きました。にわかに信じられないとは思いますが、今日、校長先生にお会いできたのはきっと神様のお引き合わせに違いありません。ここに書いてあることは決して漏らさない事を約束して下さい。』
 『もうすぐ9月11日です。アメリカで同時多発テロが発生します。イスラム原理主義者にハイジャックされた2機の民間航空機がニューヨークの世界貿易センタービルに激突します。別の一機がワシントンDCの国際総督のビル、更にもう一機がペンシルバニア州のビッグバード郊外に墜落します。3千人以上の死者が出ます。それ以後アメリカはイラクとの戦争に入ってゆきます。これは予言ではありません。歴史的事実です。私達親子が未来から来たことの証明です。今度お会いした時に私達の目的をお話しします。この件はくれぐれも秘密にお願いします。もし万一9月11日前に漏れる様なことがあれば、私達の命、又先生の命も危うい事になります。これから私達親子がこの世界で生き残り、この世界に来た使命を達成するためには、まず先生のお力が必要です。宜しくお願いします。』

 しばらく沈黙が続いた。

 署長はそのメモをじっと見てやがて顔を上げ、深いため息まじりに譲の顔をしみじみと見据えた。
 「このメモは9月始めに未来さんから貰ったものです。9月11日の5日前です」
 署長は校長先生の言葉に動揺を押し殺すかの様にして聞き入っていた。

 その時、署長の机の上の電話がなった。
 署長室にじかに電話をかける人はかなりの重要人物である。
 「ハイ、熊沢です・・・・ハイ、ハイ・・・・」
 署長はしばらく電話で話しをしていた。
 ムサシはこれから何か起きるかも知れない予感がした。
 父の顔をじっと見た。
 「大丈夫だ」
 そう言って譲はムサシの肩に手をおいてグイッと力を入れた。

 「調度良かった。市長が来て下さるそうです。今すぐに」
 市役所と警察署は隣合わせになっている。歩いて何分もかからない。
 「市長をまじえて話をしましょう。心配はいりません。きっと二人にとって良い答えが出るでしょう」
 署長は不安そうな二人を見ながら励ますような口調で言った。
 そして再びメモをじっと見つめていた。

 やがて「やあーお待たせしました」
 ドアが勢い良く開いた。
 署長と校長先生はさっと立った。
 それにつられる様に譲も立った。
 ムサシの肩をポンポンと軽くたたいて譲は起立をうながした。
 「いや、いや、そのまま、そのまま」
 市長はそう言いながら署長の隣のソファに深々と腰をおろした。

 「校長先生、お久し振りです。最近は打っていますか」
 「ハイ、先日駅前サロンの大会に出ました。今ここにいるムサシ君に見事やられました」
 「ほーう、ムサシ君、校長先生に勝つほど強いですか」
 市長はムサシを見ながらニコニコしている。
 「こちらがムサシ君のお父さんで譲さんとおっしゃるんです」
 「そうですか、はじめまして、市長の山科です」
 「市長、誠に信じがたいことかもしれませんが・・・・・・」
 署長と校長先生はこれまでのいきさつを事細かに話して聞かせた。

 途中市長は話を聞きながら時々譲の顔、ムサシの顔を見ながら、頷く様にさかんに首を振っていた。
 深々と座っていた腰がだんだんと前にせり出してきて、話の終わりのころはソファから落ちそうなほど、身をのり出していた。
 「それで、未来さん、あなた達親子は何の目的で今の世界に来たのですか」


                                つづく