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  未来少年ムサシH  勉強開始


 「やあー皆来てるー。あれー誰もいないの・・・」
 ドアを開けながらハッキリ娘の三原ゆかが、大声を出して、拍子抜けした顔で入り口に立っていた。
 「三原さんが一番だよ」
 一人、部屋の中で碁盤と碁石の準備をしていたムサシは嬉しそうににっこり笑った。
 「失礼します」
 「あっ若宮先輩」
 「ユカちゃんひとりだけ?」
 昨日ムサシが話をした時、一番に拍手を送ったリーダ格の若宮幸子が、入って来た。

 「何だ、女の子二人だけか、やっぱし来なきゃ良かった」
 ふてくされた顔をしながらガンタツが入って来た。
 「あら、ガンちゃん、へー意外だなあー、どういう風の吹きまわし?」
 若宮は信じられないといった風に少し笑みを浮かべながら言った。
 「どうもこうもないよ、碁なんかいやだよと言ったら、親父にぶっとばされたんだからしょうがねえだろう」
 「へー、ぶっとばされたの」
 三原が真剣な顔をしながら聞き返した。

 「おー、集まっているな」
 「あっ校長先生、まだ三人だけです。三人じゃさびしいなあー」
 「大丈夫よ三原さん、これから私達で皆に呼びかけて増やしていきましょう」
 若宮は言った。
 「岩田君、覚える気になったのか」
 校長先生は岩田の肩に手を当てながら笑っていた。
 「はい、しょうがないです」
 「そう言うなよ、きっとやってよかったって思うようになるよ」
 「ムサシ君、じゃ、三人だけでもいいじゃないか始めよう」
 校長先生が言っている所へ
 「遅くなってすみません、僕も入れて下さい」
 そう言いながら一人の男の子が入って来た。
 皆は一斉に振り向いた。

 「エーッ」
 めいめいが意外だと言わんばかりの顔をしている。
 「僕もやってみようと思ったんです。ムサシ君はまだ4年生なのに皆の為に一生懸命だし、やれば何かいいものをつかめるかも知れないと思ったんです」
 入ってきたのはIQだった。
 「これで四人になりましたね」
 ムサシは嬉しそうに校長先生を見上げながら言った。

 「よし、始めよう」
 校長先生の合図でムサシは教壇に添えつけられた大きな磁石の碁盤の前に立った。
 「碁の目的はね、黒石と白石がどっちが沢山自分の仲間をこの碁盤の中に生かすことができるかという競技なんだよ。そのためのルールがあるんだ。ルールはほんのちょっとだけだよ」
 ムサシがそう説明している時、ゆっくりとドアが開いた。

 「あのー、僕も入れてくれますか。まだ間に合いますかあー」
 「あー、いいよいいよ。さあ、入って席に着きなさい」
 おどおどしながらモアが来た。
 いつもひっそりして、周りの人のことばかり気になって、自分の気持ちをなかなか表現出来ない子だった。

 ムサシはにっこりして「ルールはかんたんだよ。1つは、こんな形になって相手の石を囲んでしまったら取り上げていいんだよ」
 そう言ってポン抜きの形を作った。
 「へー面白い」
 三原が早く次の説明を聞きたいと言わんばかり好奇心いっぱいの顔をしていた。
 「二つ目のルールはね、打ってはいけない所があるってことなんだよ。でもその打ってはいけない所も打ってもいい所になることがあるんだよ。ここだけがちょっとだけややこしいけど、これがちゃんと分かるともう碁が打てるんだ」
 ムサシはほほを紅くしながら一生懸命に説明した。

 2時50分から始めて45分間があっという間に過ぎて行った。
 「皆、分かるかなあ。碁ってこんな簡単なルールなんだよ。でも途中の変化は無限なんだ」
 校長先生は皆を見ながらニコニコしていた。
 「愛原君はどんな感じをもったかな」
 「面白そうです。考えることがいっぱいありそうです」
 「そうですね。三原さんはどうですか?」
 「難しそうー、でも私の頭でも少しは良くなるかなー」
 「無理、無理、おれ達の頭じゃどうしようもないよ」
 ガンタツがまぜっかえした。
 「そんなこと無いと思うわ、誰だって努力すれば、その分だけ必ず進歩するはずよ」
 若宮はいつもの様に落ち着いた口調で言った。
 「そうだよ、皆な秘めた力を持っているんだ、その秘めたものを発見するんだよ」
 校長先生は皆が続けてくれることを、願う様な気持ちで一杯だった。


                                つづく