翔べ宙太(みちた)!10  宙太、絶体絶命!


 「和尚さんの所でやったブラックホールだ」
 しかし、目の前の星座は、和尚さんの所でやったのとは違ってもっとたくさんの星があった。

 「むずかしいな!」宙太はしばらく考えて青い星を一つつまんで置こうとした。

 その時、再びさきほどの声がきこえた。
 「宙太、おまえに三回のチャンスを与えよう。もし三回目に失敗したら、その時はもう、永遠におまえは父に会うことはできない。よおーく考えろ。わかったな。失敗は二回しか許されないぞ!」

 そして声は消えて、また沈黙の世界になった。

 三回失敗したら、永遠に父には会えない。宙太は心底こわくなった。
 宙太は震えた。そして、震える手でそっと青い星をおいた。

 その瞬間、その青い星はバキューンというものすごい音をたてて弾きとばされて宇宙のかなたに消えて行った。

 宙太は思わずのけぞった。
 ジュピターも恐怖に震えたようにキューンキューンと鳴いていた。

 宙太は全身にびっしょりと汗をかいていた。
 のどがからからに渇いていた。
 父が見える。苦しそうに今にも倒れそうにあえぎながら網を引いていた。

 「とうちゃん」宙太は汗と涙ともわからない顔中びしょびしょになって泣いていた。
 ジュピターは宙太をはげますように鳴いている。
 今度こそ、宙太は気持ちをふるいたたせるように「ワーーー」という精一杯の大声を出した。
 そして、深く深呼吸をした。

 じっと赤い星座を見た。
 「ここだ」宙太は、汗と涙でぐしゃぐしゃになった顔を手でぬぐうこともなく、こきざみに震える手でそっとおいた。
 そして、確信にみちた表情で、置いたその青い星をぐいっと押しつけた。

 数秒間、その星は光っていた。
 宙太はやったと思った。
 そう思った次の瞬間、その青い光はスーと消えていって、暗黒な星になった。
 そして、ぶくぶくとぶきみな音とともに、じょじょに膨張しはじめた。

 宙太はその異様な光景におもわず後にのけぞった。
 ジュピターも宙太の背後に隠れて、その光景をじっと見ていた。
 つまんだ時の10倍くらいの大きさにふくれあがったかと思った瞬間、「ブオーン」という音響とともに大爆発をおこした。

 宙太とジュピターは吹き飛ばされた。

 宙太は顔面蒼白になった。恐怖で声が出ない。
 「どうしよう、あと1回、あと1回失敗すれば、もう永遠に父ちゃんには会えない」
 宙太は自分の力の無さが悔しかった。

 宙太は途方にくれていた。
 ふと、昨日の光景が浮かんできた。
 天道寺の庭が見えた。
 草心が座っていた。
 こちらを見て笑っていた。
 そばに碁盤と碁石が置いてあった。

 「和尚さん、そうだ、昨日和尚さんが俺に教えてくれたのは、このためだったんだ」
 「その前も、きっと、早く俺に教えたかったから。リマ婆ちゃんが草もち作って俺を呼んでくれた時も、そうだったんだ。どうしてそれがわからなかったんだろう」
 「もっと早く、一生懸命和尚さんに教えてもらっていれば、きっと、できたんだ」

 草心の姿を思い浮かべて、宙太は気持ちが落ち着いてきた。
 そして、気持ちをふるいおこして言った。
 「神様、神様聞こえますか。さっき俺に話してくれたのは、神様でしょ」
 「神様、お願いです。あと1回しかチャンスがありません。今の俺には力がありません。少し時間を下さい。お願いです」