翔べ宙太(みちた)!16  その気迫、躍動の姿


 「神様、この問題はこの形では解けません。赤星星座はどんな手を使っても、この宇宙から蒸発しません」
 宙太は続けた。
 「神様、俺の声聞こえていますか? でも、この一番左端の星が1つ右にずれて置いてあれば、この星は蒸発します」

 やがて、声が聞こえた。
 「宙太、良くやった、良くやった。お前の言うとおりだ。この問題はこのままでは解けない。はっきりと解けないと答えられたのは、人間では宙太が始めてだ」
 「では、この星がここにあれば、どうなるのだ?」
 神様の声が聞こえると左端の赤星が右に1つずれた。
 宙太はすかさず、青星を第1手目、急所に置いた。
 バシッと2着目の赤星が出てきた。
 それに対して、3着目、宙太が置いた。
 そのようにして、延々実に20手を越え、さらに29手目で赤星星座はブラックホールがひとつになった。

 父の時間が再び止まった。

 やがて神様の声がした。
 「みちた、よくぞ解いた。でも宙太は本当に自分一人の力で解いたのか?」
 「はい・・・いえ、俺一人の力じゃありません。仏様、道策先生、竹治じいちゃん、今日早く帰らせてくれた学校の先生、和尚さん、ジュピター、それにいつも一緒にいてくれる母ちゃん、父ちゃん。俺父ちゃんが大好きだから必死で頑張ったんだ」

 最後は泣き声になりながら、宙太はいっきにしゃべった。

 「そうか、そうか、宙太、よし、よし」
 その神様の声が終ると赤星星座の光がだんだんと消えていった。
 そして赤星星座全体が、真っ黒になったかと思った次の瞬間、バシッーというものすごい音とともに、宇宙全体が昼になったかと思うほどのものすごい光を放って、蒸発していった。
 大きく開いた穴の中は無数の小さなダイヤがキラキラ光っているかの様だった。
 シャーというサイダーの泡が消える時のような余韻を残して全ての光が消えていった。

 「いまだ! とうちゃーん。ジュピターこい」宙太は大きく開いた穴の中を駆け抜けていった。

 三度、父の時間が動き始めた。
 父は大きく肩で息をして、網を引き出した。
 「とうちゃん、俺手伝うよ」
 そう言って、宙太は父のそばで、網を握って引っ張り始めた。ジュピターも網をくわえて引っ張っていた。
 「おおー宙太、よく来た」
 そう言うと父親はにっこりと笑った。
 網はビックリするほど軽くなった。
 するすると引いた。網の底が見え始めた。見ると、大きな魚が網を破かんばかりに、いっぱい入っていた。
 「わっー、とうちゃん、とうちゃん、やったねー」
 「ジュピター見ろ、魚がいっぱい取れた」
 「かあちゃんが喜ぶね、きっとかあちゃん喜ぶねー。父ちゃんも早く帰れるね」
 父はにっこり笑って宙太を見つめていた。

 「宙太! 宙太! 宙太!」どこからか母の声がする。
 「あっー、かあちゃんだ!」


 「宙太、宙太」
 宙太はがばっと起きた。
 「あっ、かあちゃん」
 「宙太どうしたの、大丈夫かい」
 「うん、大丈夫だ。かあちゃん、とうちゃん助かったよ。魚いっぱい取れたよ」
 「また宙太は夢を見たの? でも今のは、いい夢みたいだね」
 「うん。ああ、たすかったー」そう言って、宙太は大きなため息をついた。

 つづく