翔べ宙太(みちた)!24  村茂との決闘


 ゴンは竹やぶをそっと音がしないように出て行った。
 そして足音を忍ばせながら2、3歩前へ進んだ。
 石ころ1つ取って5人の背後に投げた。
 静寂な公園にパシャッと石の落ちる音がひびいた。
 5人は一瞬ビクッとして、一斉に振り向いた。
 そこには、頭巾を頭からすっぽりとかぶり、古新聞の腹巻とダンボールの足のよろいのために、一層大きな図体のゴンが仁王立ちに立っていた。
 左手には長い棒のような物をもっている。

 「ゴン遅いぞ、逃げたんじゃなかったのか」村茂はいっぱいの虚勢を張って言った。
 その時、ゴンの後ろの松ノ木の中くらいから低く不気味な声がした。
 「お前達、そこで何をしておる。私は神様だ、5人で一人をやるとは何事だ。私はゴンの味方だ、ゴンの味方だ、ゴンの味方だ」声はだんだん小さくなって消えた。
 次の瞬間、藪が一斉にばしゃばしゃと揺れた。
 5人には明らかに動揺が走った。
 4人の子分達は1〜2歩それぞれ後ろの方に後ずさりした。

 ゴンは左手に持っている棒を右手でつかんで静かに大きく円を描きながら刃を抜く時の動さをした。
 そしてゆっくりと右の方へ振りかざした。
 宙太は持ってきた懐中電灯でその刃を照らした。
 キラッと光った、そしてすぐにスイッチを切った。
 「あっ刀だ、本物の刃だ」5人はひるんだ。

 その時ゴンはあらん限りの大声で叫んだ、「村茂 覚悟!」叫ぶと同時に刃を振り上げて全速力で村茂めがけて一直線に走った。
 村茂は思わず2、3歩後ずさりした。
 4人の子分達は「わー」と言って我先に逃げ出した。
 ゴンは村茂の座っていた腰掛に飛び乗り、更にそれを踏み台に村茂めがけて刃を振りかざしたまま飛び掛って行った。
 村茂は後ずさりしながら、思わずしりもちをついてしまった。
 その時、着地したゴンはそのまま村茂の上にとびかかり、左頬(ほほ)に思いっきりパンチを入れた。
 ガツンというにぶい音がした。次に村茂のミゾ落ちを左コブシで力いっぱい打った。
 村茂は「うっ」と言って、身を海老のように丸めて横向きに倒れて動かなくなった。

 ゴンは村茂の着ている襟首のボタンを戦利品として引きちぎった。
 村茂は「うー」とうめきながら起き上がろうとした。
 「宙太 今だ!」ゴンが合図を送った。
 駆け寄ってきた宙太が村茂の背後に回った。
 「ウー」と言いながら上半身を起したところをゴンは「エーイ」と大声を出しながら頭から肩にかけて切りつけた。
 後ろに回っていた宙太は持って来た牛乳瓶の蓋をとって、頭から一気にかけた。
 真っ赤な液体が頭から顔中にかかった。

 冷たさにハッと我に返った村茂は顔を手でぬぐった、手が真っ赤になった。
 それを見て「ワー」と大声を出した。
 大出血をしていると思っておびえてしまった村茂は「やめてくれー、やめてくれー」と悲痛な声で叫んだ。
 勝負は一瞬の内に決まった。

 「もう悪さはやめろ! お前の子分を見ろ、臆病なやつらだお前のことなんか誰も助けないじゃないか、お前も早く目を覚ませ」ゴンが言った。
 「もう決闘は終わりだよ。村茂君はやっぱり強いね、仲間は逃げたのに、一人逃げなかったもんね」宙太が言った。
 そして村茂の手を引張って起した。
 村茂は黙ってうなだれたまま去ろうとした。
 「村茂!」ゴンが叫んだ。
 村茂が振り向くと引きちぎったボタンをポイッと投げた。

 この一部始終をじっと二つの影が見ていた。
 大介と草心だった。二人は顔を見合わせて、ニッコリ笑った。
 「よし! これでいい」草心が言った。大介は黙ってうなずいた。

 つづく