翔べ宙太(みちた)!25  決着を付ける


 翌日の朝、草心は諸富小学校の校長室にいた。
 決闘の一部始終を校長と教頭と担任の二宮先生3人に話した。
 校長は黙って聞いていた。そしてどこかに電話した。
 放課後、子供達全員が帰った後、宙太とゴンが残されていた。そして校長室に呼ばれた。

 校長室にはたくさんの人達がいた。宙太の父大介もいた。
 ゴンの婆ちゃんがいた。草心和尚もいた。
 校長先生のほかに教頭先生、担任の二宮先生、他に昨日決闘した村茂とその子分4人、そのそばに親と思われる大人が5人と山領小学校の校長先生。
 更に警察の服を着た偉い人のような顔と、見たこともない立派な身なりの人達がいた。
 草心が校長に進言して、関係者一同及び警察、教育委員の人たちも呼んで、今回の決闘事件の決着をキッパリと付けるために集めたのだ。

 そのオブザーバとして他のクラスの先生も3人ほどいた。
 その中の一人が独り言のように小さな声で言った。
 「力田は大人しい子と思っていたが、良く問題を起す子だな」
 草心はその言葉を聞き逃さなかった。強い口調で言った。
 「何を言っているんだ、宙太は問題を解決しているんじゃないか。誰にも頼らず自分の力で、あなたは一体この学校で何を教えているんだ」
 その先生は顔を真っ赤にして黙ってうつむいた。
 草心の突然の強い言葉に、周りは一瞬凍りついた様になった。

 草心はまずいと思った、馬鹿な言葉につい強く言いすぎたと思った。
 平静を取り戻し、努めて冷静に草心は続けた。
 「昨日諸富小の薮田権と力田宙太と山領小の村茂・・・・・・・」草心は事件の大すじと事件に到るまでのいきさつを話した。
 二人の校長がそれぞれの生徒に尋ねた。
 「間違いないか?」
 ゴンと宙太は「はい、間違いありません」
 村茂と他4人は、ただ黙ってうなずいた。

 再び草心は話を始めた。
 「今回の事件は、子供達が自分達の問題を自分達の方法で決着を付けたのです。この決着の付け方を私は尊重したいと思います。問題はこの問題に大人達が余計な口を挟んだりまた子供達につまらない入れ知恵をして、問題をむしかえす事です」
 「ここに警察の所長さんと教育委員のかたにも来て頂いております。両校長の立会いの元でそれぞれの親御さんと子供達同士和解をはかりたいと思います。皆様異存ありませんね」
 草心は有無を言わせないきっぱりとした口調で一気に話した。
 それぞれの子供達と親達は黙ってうなずいた。

 「宙太、みんなと仲直りの握手をしろ」大介は、宙太をうながした。
 「うん」と言って、宙太は前へ一歩出た。
 「みんな、仲良くしよう。俺の仕掛けにびっくりした? おどかしてごめんね、村茂君服汚してごめんね、ゴンちゃんのパンチ痛かった?」
 宙太の無邪気な言葉に思わず大人達から笑いがもれた。
 子供達もつられて、バツの悪そうな顔して苦笑いをした。
 この子には人の心を動かす力がある。人のかたくなな心さえ解きほぐしてしまう何かがある。
 草心は宙太にはかなわないと思った。宙太の無邪気な笑顔を見ながらこの子はどれ程の器を持っているのだろうと草心は嬉しかった。

 警察署長が言った。「今回の事件は特別の計らいで不問に致す。もし今日の約束を破ってまた蒸し返す様なことがあったら、その時は逮捕する」
 と強い口調で言った、顔は笑っていた。
 みんなもどっと笑った。

 みんなめいめいに帰って行った。
 後に宙太とゴンと草心と大介と校長先生と二宮先生が残った。
 応接室のテーブルの上には宙太が考えた武器が置いてあった。
 ダンボールで作ったメガホンと細長い紐、足のサポーター、古新聞とノートで作った腹のプロテクター、防災頭巾と軍手そして赤い絵の具の液体を入れた牛乳瓶と竹を削って銀紙を張って作った刃と懐中電灯。

 それらを見ながら草心が言った。
 「宙太が全部考えたのか?」
 「うん、父ちゃんが絶対に相手に怪我をさせてはいけない、自分達も怪我をしてはいけないって言ったから」
 大介は笑っていた。

 「ゴンも良くやったな」草心が言った。
 ゴンは頭をかきながら「宙太が教えてくれたんだ、いろいろ」
 「そうか、そうか」草心が言った。
 大介と校長先生と二宮先生はニコニコしながら聞いていた。

 「俺、宙太にやられて、落ち込んでいた。でも宙太がまた友達になってくれて俺嬉しかった。それで分ったんだ」
 「そうか、薮田君は何がどう分ったのかな」校長先生が優しく言った。
 「うん、強い男は優しいってことが分ったんだ。強ぶっている男は弱いってことが」
 「そうか、そうか、薮田君も偉い!」

 校長先生がゴンの肩と宙太の肩をしっかりと握った。

 つづく