翔べ宙太(みちた)!50  碁は人を救うことができる。日々、活き活きと生きる


 翌日の月曜日、いつもの様に宙太が登校する時、行き会うごとに皆が宙太に声をかけた。
 「やあ、宙太、おはよう」
 「宙太、やったなー、すごいぞ」
 「宙太、おはよう、すごいね」
 昨日のことがもう知れ渡っているのかと、宙太はびっくりした。

 教室に入ると、その時既に来ていた友達が一斉に拍手をした。
 宙太は嬉しかったが、少し照れくさかった。

 二宮先生が入ってきて、「宙太、おめでとう」と言って肩をぽんとたたいた。
 「皆、体育館に集まって、全校集会だ」二宮先生が言った。
 体育館では、校長先生が壇上に立った。
 「皆さん、おはようございます。本日はわが諸富小学校において、大変嬉しくて名誉な事を皆さんにお知らせします。もうすでに知っている友達も沢山いると思いますが、昨日福岡で囲碁大会が開かれました。この大会は日本青少年囲碁協会の主催ですが、その大会でわが校の4年1組の力田宙太君が強敵を見事倒して九州代表になりました。8月10日の全国大会に出場することになります。わが校から全国大会に出るということは、色々な競技が有りますが、初めてのことです。皆の友達が全国大会に出るということは嬉しいですね。皆で応援しましょう。そして、皆も応援するだけじゃなくて、自分の得意なもので、九州大会や全国大会に出られる様に、頑張りましょう」
 さらに校長先生は続けた。
 「ここで、皆さんに急きょ報告があります。明日の火曜日、私の友達でもあります大学の日之輪教授の講演会を開きます。この講演会は皆さんのお父さん、お母さんの為のものです。内容は力田君が九州大会で優勝したのを機会に、私も碁が大好きですが、『碁は教育にどのように役に立つのか』という内容です。この体育館で今度の火曜日の夜の7時からです。急ですが、是非、たくさん出席するようにお父さんお母さんに伝えて下さい」

 宙太は学校が終って校門を出ようとする時、初恵に出会った。
 「あっ初恵ちゃん、昨日、応援に来てくれたんだね。ありがとう。俺後で初恵ちゃん探したけどいなかったんで・・・」
 昨日表彰が終って宙太は初恵にお礼を言おうと思って探したけど、初恵は帰った後だったのだ。
 「う、うーん、もし邪魔しちゃいけないと思ってみっちゃんに見つからない様にしていたの。でも決勝の時見つかってしまって、邪魔したんじゃないかと思ったの」

 「やあ、宙太バイバイ」
 「宙太君、さよなら」
 皆が宙太に声を掛けて行った。
 もう誰も初恵と話しているところを、からかう様なことは無かった。

 「そんなことないよ。初恵ちゃんのお陰で勝てたんだよ」
 「えーっそんなこと」
 「本当だよ。俺あの時、大ピンチだったんだ。小山君の妹の話を聞いてしまったんだ。決勝の相手だよ、水飲みに行った時」
 宙太はその時の話をこまごまと話した。

 「そんな時、誰かに見られている様な気がして、ふっと顔を上げたら、初恵ちゃんが見えたんだ。本当は人がいっぱいいたから見えないんだよ。でもその時、スッポリとトンネルの様に穴が空いていたんだよ。そして窓から夕日が差していたから、ハッキリと初恵ちゃんだと分ったんだ。俺びっくりしたよ、どうして初恵ちゃんがいるんだってね。でもすぐに分かったよ。初恵ちゃんが祈ってくれたんで。俺、初恵ちゃんの気持ちに答えなきゃいけないってね、思ったんだ。その時。そしたら力が湧いてきたんだよ」
 「えーっ本当! 本当なら嬉しいなあ」
 「本当だよ、その話和尚さんにも帰る時、話したんだ。そしたらね、和尚さんもそうだねと言ってたよ。初恵ちゃんや皆が応援してくれるから、それが俺の力になっているんだってね」
 「そう、うれしいな」

 「私ね、本当は私も囲碁習っているの。まだ1ヶ月位しか経ってないけど、三星さんへ行っているの」
 「えーっそうだったの、最近俺和尚さんとばかり打って、三星さんへは行ってないんだよ」
 「みっちゃんが碁が強いって噂が学校中であるの、それで私も知ったの。だから私も囲碁を教わりたくなったの。でも難しいね、全然強くなれない。みっちゃんみたいにはなれないよ」
 「そんなことないよ、じゃ、今度俺とやろうね。初恵ちゃんだったらすぐ強くなるよ。大丈夫俺にまかせておいて」
 「わーうれしい、みっちゃん、約束だよ、絶対だよ、教えてね」
 初恵は大喜びだった。

 いつもひっそりとしていた初恵がゴンとの事件以来、人と話が出来る様になっていた。
 特にここ1ヶ月囲碁を習い始めて以来、宙太と同じ事をやっていると言う気持ちからか、明るくなっていた。
 挨拶もハッキリとできるようになっていた。

 宙太は帰ると直ぐに天道寺へ行った。
 勿論ジュピターはいつも宙太の側にいた。
 「宙太、昨日はよくやった。全国大会は8月10日だ。あと2週間とちょっとだ。今日からまた特訓だ。今までの特訓よりもっとすごいぞ。スーパーウルトラ特訓だ」
 草心の声が弾んでいた。
 「ラジャー、スーパーウルトラ特訓、了解しました」宙太はふざけて直立不動で敬礼して見せた。
 草心と宙太は大声で笑った。

 つづく