翔べ宙太(みちた)!66  いよいよ全国大会


 いよいよ大会当日が来た。
 会場には全国の地区代表10人と、その父兄や大会関係者で50人を超える人が集まっていた。
 代表者の胸には赤いバラ飾りがついた名札がつけてあった。
 「九州代表、諸富小学校4年生、力田宙太」と書いてあった。
 宙太は少し誇らしかった。
 他のほとんどの代表は5年生、6年生で宙太が一番年少で身体も一番小さかった。

 「宙太、どうだ他の選手達は強そうに見えるか」
 草心が宙太の肩に手を置いて言った。
 「うん、みんな強そうだね。俺が一番からだも小さいよ」
 「はははは、そうだな。でも他の子も宙太の事をきっと強そうだと思っているよ。そんなときは俺が一番強いって思っていればいいんだ。あっー、あそこにいるのは天田君だ。ほら」
 そう言って、草心は会場の一番奥に一人静かに座っている少年に視線をやった。
 この前会った時の様にヘッドホンをして音楽を聴いていた。
 「俺、行って来るよ」
 そう言うと宙太はさっと天田の方へ歩いて行った。

 「こんにちは、俺、力田宙太です。天田君ですか」
 天田はヘッドホンをはずしながら宙太を見た。
 「やあー、君が力田君。初めまして、天田です」
 そう言いながら、右手を差し出した。
 宙太も少しはにかみながら右手を出し握手した。
 「僕は君に会うのを楽しみにしていました。力いっぱい打ちましょう」
 「うん、俺も楽しみにしていたよ。早く打てるといいね」
 そう言って話している所へ一人の少年がやって来た。

 「やあー、天田君と力田君ですよね。私は一石です。初めまして」
 そう言って、右手を差し出して、さっと天田と握手した。遅れて宙太も手を出した。
 「力田君、遠い所大変だったね。打つの楽しみですね」
 「うん」宙太はニコニコしながら一石をじっと見つめていた。
 宙太は少し緊張していた。二人ともずいぶんお兄さんにみえた。
 「私は今日二人と会うのを本当に楽しみにしていました。私は今日のために、二人の碁を随分研究しました。二人とも棋風は異なっても素晴らしい内容です。優勝はきっと3人の中から出るでしょう。どのような結果になっても、納得できる様にお互いに全力で戦いましょう」
 一石が言った。

 「そうですね。僕も二人と出会えたのは素晴らしい幸運と思っています。悔いの無い様全力で打って、二人との思い出を楽譜に残したいと思っています」
 天田が言った。
 「俺、全部の力を出す。天田君と一石君と友達になりたいから」
 「勿論です」二人が声を揃えたように同時に言った。

 「選手の皆様は、中央のリーグ戦表のところにお集まり下さい」
 1回戦の抽選を行なう場内放送が流れた。
 「さあー、これから三人で伝説を作りましょう」
 そう言って、一石は先頭に先立ち、二人を従えるかのように歩いて行った。

 「選手の皆さん、この箱の中からカードを引いて下さい」
 沢山の人が見られるように、ゆったりと並べたテーブルに1番から5番まで番号が書いてある。
 そばには、モニターテレビに映し出されて、離れた所からでも進行状況が分る様になっている。
 子供達は一列に並んだ。
 宙太は列の中ほど天田の後ろにいた。
 少しドキドキしていた。
 宙太は早く天田と打ちたかった。
 天田の棋譜を見たときから、その美しい流れにすっかり魅了されていた。
 天田が引いた。係りの人に札を渡した。「天田君、5番テーブルです」
 宙太の番になった。5番はまだ1枚しか出ていない。
 『神様、5番を出してください』宙太は心の中で思いながら、目をつぶった。
 箱の中に手を入れた。最初に触った札をさっと取り出した。
 目を開けた。

 つづく