翔べ宙太(みちた)!G  スターウォーズゲーム


 「何で今まで気がつかなかったのだろう」草心はつぶやくように言った。

 翌日のお昼過ぎ、草心は駅前の本屋に立ち寄った。
 「よし、これでいい」

 そして、昨日のように宙太が帰るころ、宙太の家の近くを落ち着かない様子でうろうろしていた。

 ジュピターがしっぽを振りながらワンワンと鳴いた。
 「おっ、帰ってきたな」
 「あっ、和尚さん」
 「やあ、宙太か。宙太に見せたいものがあるんだ」
 「えっ、なあに」
 「うん、来れば分かるよ」
 「何だろなー、楽しみだなー、ちょっと待ってね、今すぐ行く」

 宙太はいつものようにカバンをほうり投げると、ジュピターを連れて駆け出した。
 草心より先に走ってお寺へ向かった。
 「おーい、宙太、そんなに急がなくてもいいよ。待ってくれよ」
 草心はふうふう言いながら追いかけて行った。

 草心がお寺の門をくぐって来るのを見るなり、縁側に腰掛けて足をぶらぶらさせながら宙太は言った。
 「和尚さん、見せたいものってなあに? 早く見せて、見せて」
 「まあまあ、落ち着け、落ち着け」
 草心は息を整えるように、境内の中をゆっくり歩きながら玄関へ入っていった。

 「なんだろうなー」
 宙太はお寺の門の脇の大きな松の木の上にカラスが止まっているのを見ながら、「カアー、カアー」と鳴きまねをしていた。

 やがて草心が現れた。
 「宙太、これを見てみろ」
 そう言って草心は、新聞の四つ折りくらいの大きさの一冊の本を差し出した。
 「わっー! すごい」宙太の目が輝いた。
 そして、ページを1ページずつ次々めくっていって、そのたびに「わっーすごい、わっーすごい」とくり返し言った。
 草心は星座の本を見せたのだ。
 それはカラーでイラストされていて、宙太ならずも大人でも楽しめる本であった。

 「宙太どうだ、気に入ったか」
 「うん、うん」
 「欲しいか」
 「えっー! くれるの? もらっていいの」
 「うん、宙太にあげる。でも1つだけ和尚さんの言うことを聞いてくれるかな」
 「なあに?」
 「和尚さんとスターウォーズゲームをやろう。そのゲームで和尚さんに勝ったら、その本を宙太にあげる」
 「うん、いいよ。早くスターウォーズゲームをやろう」

 草心は碁石を手元に引き寄せながら、
 「ルールは簡単だ。宙太と和尚さんで星座を作る競争をしよう」
 星座と聞いて、宙太の目がまた一段と輝いた。
 草心が次に何を言うのか待ちきれないといった表情で、碁盤と草心の顔を交互に見ながらそわそわしていた。

 「この、線と線が十字に重なっている所に、好きなように石を置くんだ。この石が1つの星だ。そして自分の好きな形の星座を作るんだ」
 「星座を作るとき、宙太の作りたい形と和尚さんの作りたい形がぶつかるんだ。こんな風に」
 と言いながら、草心は黒石白石を交互に一人で置きながら、石が取られる形を作った。
 「こんなふうに相手の星が動けなくなったら、取り上げていいんだ」
 碁盤の上には、白石をポン抜いた黒石4ッがあった。

 「あっ! ブラックホールだ」宙太が言った。
 「えっ、あっそうそう、ブラックホールだ。これは一番小さいブラックホールだ。こんなふうにやって2個取れば、こんなに大きなブラックホ−ルだ」
 「じゃ、白が黒を取れば、ホワイトホールだね」
 「うんそうだ、ホワイトホールだ」
 「じゃ、ブラックホールとホワイトホールの戦いなの?」
 「そうだ」
 「たくさん作ったほうが勝なの?」
 「そうだ、そうだ」草心の声が弾んでいた。

 「じゃ、俺がホワイトホールだ」
 そう言うなり、宙太は白石を手元にとって、碁盤の真ん中にバシッと置いた。
 「和尚さん、置かないの? 早く置いて」
 草心は一瞬ためらったが、まーいいかと言った顔で白石にくっつけて置いた。

 「俺が作った星座を教えてあげるよ。ヘビツカイ座とヘルクレス座を一緒にすると、でっかいのができるよ」
 「アナコンダ座と言うんだよ」

 草心は宙太の打った石にあっちこっちくっつけながら、わざと宙太にポン抜きをさせるような打ち方をした。
 「あっ! ホワイトホールができた! 和尚さん取ったよ」
 そう言って、取った黒石をつまんで、草心に見せた。
 「うーん、やられたな」草心はしめしめと思った。
 そうしている内に、たくさんのホワイトホールができた。
 草心は「うーん、やられたな。和尚さんの負けだ」
 「わー、勝った勝った。ねっ、もう一回やろう。和尚さん、もう一回やろう」
 「よし、今度は負けないぞ」
 草心は2回目も宙太に勝たせた。

 「うーん、宙太は強いな。よし今度はルールをもう少し難しくしよう。そしたら和尚さんが勝つぞ」
 「うん、いいよ」宙太はすっかりその気になっていた。
 「今度は今のルールに、もう1つルールを足すんだ」
 「星座がこんな風にできるだろ、そしたら、この星座の周りを敵の星が取り囲んでしまって、ブラックホールが1つしかなかったら、ここに白石を入れて、この黒い星座が全部取れるんだよ」
 「白と黒、反対でも同じことだ」
 「でもね、もしこの星座にこのようにブラックホールが二つあると、絶対にこの星座は取れないんだ」

 草心は少し難しいかなと思いつつも一気に囲碁のルールを話してしまった。